ROLT
ROLT社とは――ロール・ツー・ロール印刷・加工設備を手掛ける英国メーカー
1.ROLT社の概要
ROLT社は英国を拠点とする産業機械メーカーで、特にロール状の材料を連続的に搬送しながら印刷・乾燥・打ち抜き・ラミネート・検査・巻き取りなどを行う「ロール・ツー・ロール」設備を得意としています。
同社の歴史は1985年にRichard
Rolt氏が創業したことから始まります。創業時から掲げていたのは、従来のロール・ツー・ロール設備よりも、
- 柔軟性が高い
- 信頼性が高い
- 多用途である
- セットアップが簡単
- 操作が簡単
- メンテナンスが容易
という機械を作ることでした。
これは非常に興味深い設計思想です。
FA機器では、単純に「高速」「高精度」だけを追求すると、機械が複雑になり、保守や段取りが難しくなることがあります。ROLTはむしろ、現場の作業者が使いやすく、長時間安定して稼働できる機械を重視してきたメーカーといえます。
公式サイトによれば、世界各地に250以上の印刷ラインを設置してきた実績があります。
2.ROLTの中心技術「ロール・ツー・ロール」
ROLTを理解するうえで重要なのが「Roll-to-Roll」です。
これは、紙、フィルム、ラベル材料などを大きなロール状のまま機械に供給し、連続的に処理して、最後に別のロールとして巻き取ったり、シート状に切断したりする方式です。
例えば、
原材料ロール
↓
送り出し
↓
印刷
↓
乾燥
↓
検査
↓
打ち抜き
↓
巻き取り
という工程を連続して実施できます。
一般的な印刷機では、一枚ずつ材料を処理する方式もありますが、ロール・ツー・ロール方式では材料を連続搬送できるため、大量生産に非常に適しています。
ROLTは、この材料搬送技術と印刷・加工技術を組み合わせた装置を製造しています。
3.スクリーン印刷機
ROLTの代表的な製品の一つがロールフィード式スクリーン印刷機です。
同社の印刷機には、繰り返し長さや生産数量を設定できるキーパッド式操作パネル、診断表示、電子的な位置合わせ機構、空圧式の印圧制御などが搭載されています。
また、
- スキージ速度調整
- フラッドバー速度調整
- スキージ角度調整
- オフコンタクト調整
- 自動ピーリング
- バッチカウンター
- リモート診断・アップグレード
などの機能も用意されています。
ここで重要なのが**レジストレーション(位置合わせ)**です。
ロール状材料に印刷する場合、材料が少しでも蛇行したり、送り量が変化したりすると、印刷位置がずれてしまいます。
そのため、
材料搬送+位置検出+制御+印刷
を正確に連携させる必要があります。
ROLTはこの部分を重要な技術としており、公式情報でも自動レジストレーションや電子的な位置合わせ機能を特徴として挙げています。
4.乾燥装置
印刷後には、インクを乾燥・硬化させる必要があります。
ROLTは印刷機だけでなく、Hot Air Dryer、Tower
Dryer、UV Dryerなどの乾燥装置も製造しています。
例えば同社のタワー型乾燥機では、材料を垂直方向に搬送することで、限られた設置スペースでも長い乾燥経路を確保できます。
また、ヒーター出力にはPID制御を使用し、設定温度を安定して維持する仕組みが採用されています。熱風の一部を循環させる構造も特徴です。
これはFAの視点から見ると、
温度センサー
↓
温度制御
↓
ヒーター出力
↓
熱風
↓
製品温度
という典型的なフィードバック制御システムです。
つまりROLTの装置には、印刷技術だけでなく、機械・電気・空圧・温度制御・搬送制御など、FAに必要な複数の技術が組み込まれています。
5.ダイカッター
ROLTは**Die Cutter(ダイカッター)**も製造しています。
ダイカットとは、金型などを使って材料を一定の形状に打ち抜く加工です。
ラベル、ステッカー、フィルム、シート状製品などでは、印刷だけでは製品になりません。
例えば、
ロール材料
→ 印刷
→ 乾燥
→ ダイカット
→ 不要部分除去
→ 巻き取り
という工程が必要になります。
ROLTはこうした後工程まで設備を提供することで、単なる「印刷機メーカー」ではなく、印刷・加工ライン全体を構築できるメーカーとなっています。
6.シーター
もう一つ興味深い製品が**Sheeter(シーター)**です。
これはロール状の材料を正確な長さで切断し、シート状にする装置です。
ROLTのシーターでは、精密なニップローラーによって材料を送り、設定した長さで切断します。繰り返し長さや生産数量を設定でき、バッチ単位で停止させて検査・数量確認することもできます。
さらに、ダイカッターなどの後工程設備と組み合わせることもできます。
つまり、ROLTは、
ロール
→ シート
への変換も得意としているわけです。
7.ラミネーター
ROLTはUniversal Laminatorも製品ラインアップに含めています。
ラミネートとは、複数のフィルムや材料を貼り合わせる工程です。
例えば、
印刷フィルム
+
保護フィルム
という構造を作ることで、表面の耐久性や外観、機能性を高めることができます。
ロール・ツー・ロール方式でラミネートする場合、材料の張力、速度、位置合わせなどを正確に制御する必要があります。
したがって、ここでもROLTの得意とするウェブ搬送技術が重要になります。
8.検査・巻き取り
ROLTにはInspection Rewinderもあります。
これは製造した材料を巻き取りながら検査するための装置です。
ロール製品では、完成品を一枚ずつ検査するよりも、連続して材料を搬送しながら検査するほうが効率的です。
ここには今後のFA・スマートファクトリーとの接点があります。
例えば、
カメラ
↓
画像処理
↓
欠陥判定
↓
NG位置記録
↓
巻き取り
といった自動検査システムを組み合わせることができます。
9.ROLTの設計思想
ROLTの特徴として非常に興味深いのが、**「シンプルさ」**を重視していることです。
同社は、設置、操作、保守を簡単にすることを設計原則として掲げています。また、電子部品や空圧部品についても、標準的な市販部品を使用する方針を示しています。
これは中古機械・保守部品という観点からも重要です。
特殊部品を大量に使用した設備では、メーカーから部品を入手できなくなると修理が困難になります。
一方、
標準的なセンサー
標準的な電磁弁
標準的なリレー
標準的なモーター
標準的な制御部品
などを使用していれば、設備を長期間使用しやすくなります。
FA機器の中古市場やMRO市場では、これはかなり大きなメリットです。
10.FA機器として見たROLT
ROLTの機械をFAの視点から分解すると、非常に典型的な自動化システムになっています。
例えば印刷ラインなら、
①材料供給
↓
②ローラー搬送
↓
③位置検出
↓
④位置補正
↓
⑤印刷
↓
⑥乾燥
↓
⑦検査
↓
⑧打ち抜き
↓
⑨巻き取り
という構成です。
この中には、
- モーター
- インバーター
- サーボモーター
- エンコーダ
- 光電センサー
- 温度センサー
- 空圧機器
- 電磁弁
- PLC
- HMI
- リレー
- 制御盤
- 安全スイッチ
など、多数のFA部品が使われる可能性があります。
そのためROLTは、完成機械メーカーであると同時に、多数のFA部品を組み合わせて一つの生産システムを作るシステムインテグレーター的な側面も持っています。
11.ROLTの強み
ROLTの強みをまとめると、次のようになります。
① ロール・ツー・ロール技術
連続した材料を搬送しながら加工する技術に長い経験があります。
② 印刷から後加工まで対応
印刷機だけではなく、
印刷
→ 乾燥 → 打ち抜き → ラミネート → 検査
→ シート化
まで幅広く対応できます。
③ 現場重視
操作・セットアップ・メンテナンスを簡単にすることを設計思想としている点が特徴です。
④ カスタマイズ
顧客の要求に合わせて特殊仕様にも対応する姿勢を明確にしています。シーターなどについても、単体機としてだけでなく他の装置との組み合わせを想定しています。
12.今後の可能性
ROLTのようなロール・ツー・ロール装置は、今後も一定の需要が期待できる分野です。
特に、
- ラベル
- フィルム
- パッケージ
- 電子材料
- 機能性フィルム
- フレキシブル材料
- センサー材料
- 印刷エレクトロニクス
などでは、連続搬送技術が重要になります。
また、近年は単なる印刷だけでなく、
印刷+電子回路
印刷+センサー
印刷+機能性材料
という「プリンテッドエレクトロニクス」の分野も注目されています。
この分野では、材料を正確に搬送し、決められた位置に高精度で材料を形成する技術が重要です。
その意味で、長年ロール搬送と位置合わせに取り組んできたROLTの技術は、FA・自動化という観点からも興味深いものがあります。
まとめ
ROLTは、英国で1985年に創業されたロール・ツー・ロール印刷・加工設備の専門メーカーです。単なる印刷機メーカーではなく、印刷、乾燥、ダイカット、ラミネート、検査、巻き取り、シート化など、材料を連続的に処理するための設備を幅広く展開しています。
特に特徴的なのは、**「高性能な機械を作る」だけではなく、「現場で簡単に使えて、保守しやすく、長期間安定して動く機械を作る」**という思想です。
FA業界の観点では、ROLTの装置は、
機械設計 × 材料搬送 × センサー × モーター制御 × 空圧
× 温度制御 × 印刷
× 自動化
を一体化した生産設備と見ることができます。
そして、ユーザーの仕事であるFA機器の修理・中古機器・MROという観点から見ると、ROLTのようなメーカーはなかなか面白い存在です。特に中古設備を調べる場合は、印刷機本体の型式だけでなく、搭載されているモーター、センサー、インバーター、電磁弁、PLC、リレーなどの個別部品を調査すると、部品ビジネスにつながる可能性があります。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、ROLT製の製品・部品は約5,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している会社・ブランドは確認できませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2026年 09月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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