STARRETT
STARRETT社
― 140年以上にわたり精密測定と切削工具を支えてきた米国の老舗メーカー
1.STARRETT社とは
STARRETT(スターリット)は、米国マサチューセッツ州アソール(Athol)を拠点とする精密工具メーカーです。正式な社名は The L.S. Starrett Company(L.S.スターリット社)。1880年にLaroy S. Starrett(ラロイ・S・スターリット)によって創業されました。
現在のSTARRETTは、マイクロメータ、ノギス、ダイヤルゲージ、各種ゲージ、ゲージブロック、精密定盤などの「測るための工具」に加え、バンドソーブレード、ハクソーブレード、ホールソー、ジグソーブレード、レシプロソーブレードなどの「切るための工具」も幅広く製造しています。
さらに現在では、光学式測定機、画像測定システム、レーザー測定システム、力・材料試験装置などのメトロロジー分野にも事業を広げています。公式情報によれば、製品は5,000種類以上に及び、世界各地の製造業、建設業、プロフェッショナル、一般ユーザーなどに販売されています。
つまりSTARRETTは、単なる「工具メーカー」ではありません。
「測定」と「切削」の両方を長年にわたって支えてきた、米国を代表する精密工具メーカー
と考えると、その位置付けが分かりやすいでしょう。
2.創業者Laroy S. Starrett
STARRETTの歴史を理解するには、創業者Laroy S. Starrettの存在を知る必要があります。
Starrettは農家の家庭に生まれましたが、若い頃から発明に強い関心を持っていました。農作業のかたわら、自分で作業場を設け、機械や工具を研究していたとされています。
最初の大きな発明の一つが、肉を切るための「ミートチョッパー」でした。この製品を事業化するために農業を離れ、機械製造の世界へ入っていきます。
しかし、最初から順調だったわけではありません。製造設備や加工技術について現場で学びながら事業を成長させていきました。
そして1877年、後のSTARRETTを象徴する製品となるコンビネーションスクエアを発明します。
1880年に会社を設立すると、その精密工具を中心に事業を拡大しました。1882年にはすでにロンドンとパリに販売網を築くため海外へ渡っており、創業からわずかな期間で国際市場を意識していたことが分かります。
3.STARRETTを有名にしたコンビネーションスクエア
STARRETTを語るうえで外せないのが、**Combination Square(コンビネーションスクエア)**です。
これは一つの工具で、直角の確認、45度の確認、長さの測定、けがき、中心位置の確認など、複数の作業を行えるようにした工具です。
現在では非常に一般的な工具ですが、当時としては画期的な発想でした。
STARRETTは、この工具をさらに改良し、センターヘッドや分度器ヘッドなどを組み合わせることで、一つの工具でさまざまな測定・加工準備ができるようにしました。
この「一つの工具に複数の機能を持たせる」という考え方は、現在のFA機器にも通じるものがあります。
製造現場では、
「測定する」
「位置を決める」
「基準を作る」
「加工する」
という工程が連続しています。
STARRETTはその中でも、特に「基準を正確に作る」という部分を長年支えてきたメーカーなのです。
4.精密測定工具の代表的メーカーへ
STARRETTの代表製品としてまず挙げられるのがマイクロメータです。
マイクロメータは、ノギスよりも高い精度で外径や厚さなどを測定するための工具です。
製造現場では、
・シャフトの外径
・加工部品の厚さ
・軸径
・金属板の厚さ
・加工後の寸法確認
など、さまざまな用途で使用されます。
また、ノギス、ダイヤルインジケータ、デプスゲージ、ハイトゲージ、ゲージブロック、精密定盤などもSTARRETTの主要製品です。
特にダイヤルインジケータは、加工機械の調整やワークの芯出し、平面度・振れの確認などで重要な工具です。
例えば旋盤でワークをチャックに取り付けた場合、中心が正確に出ているかどうかを確認する必要があります。
このときダイヤルインジケータを使ってワークの振れを測定します。
つまりSTARRETTの製品は、工作機械そのものを動かすものではありませんが、
「工作機械が正しく加工できる状態を作る」
ために重要な役割を果たしています。
5.ゲージとメトロロジー分野
STARRETTは単純な手工具だけでなく、より高度な計測分野にも進出しています。
現在の製品には、ゲージブロック、精密定盤、電子式ゲージ、ダイヤルゲージなどが含まれます。
さらに、光学式比較測定機、ビデオ測定・検査システム、マルチセンサー測定システム、レーザー測定システム、力・材料試験システムなども展開しています。
これは製造業における「測定」の考え方が変化してきたこととも関係しています。
昔は作業者がノギスやマイクロメータを使って一つ一つ測定していました。
しかし現在の工場では、
加工
→ 測定 → データ収集 → 判定 → 工程改善
という流れが重要になっています。
STARRETTも従来型の精密工具だけにとどまらず、電子式測定器やデータ収集システムなどへ事業を拡張しています。
例えば「DataSure 4.0」というデータ収集システムでは、電子式測定工具から測定データを取得し、SPC(統計的工程管理)などに利用できる仕組みを提供しています。
これはFA・自動化の観点から見ても興味深い部分です。
6.もう一つの大きな柱「ソーブレード」
STARRETTにはもう一つ非常に重要な事業があります。
それがソーブレードです。
特にバンドソーブレードでは世界的なメーカーとして知られています。
バンドソーは、金属材料を切断する工作機械です。
例えば、
・丸棒
・角材
・鋼材
・ステンレス
・アルミニウム
・特殊合金
・工具鋼
などを切断するために使用されます。
STARRETTは、カーボン鋼製、バイメタル、超硬チップ付きなど、用途に応じたさまざまなブレードを展開しています。
FA関係者にとっては、この「測定工具メーカーが実はソーブレードの大手でもある」という点がSTARRETTの面白いところです。
日本では「STARRETT=マイクロメータや精密工具」というイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし世界市場では、切削工具分野も非常に重要な事業となっています。
7.パワーツール用ブレードも展開
STARRETTの切削工具は大型のバンドソーだけではありません。
ホールソー、ジグソーブレード、レシプロソーブレード、ハクソーブレードなども製造しています。
つまり、
工作機械向けの切削工具から、現場作業用の切削工具まで
幅広くカバーしています。
さらに近年は超硬チップ付きレシプロソーブレードなども展開しており、難削材や高耐久用途への対応を進めています。公式サイトでは、従来製品に対して寿命や切断速度を大きく向上させた製品も紹介されています。
8.世界的な製造拠点
STARRETTは米国で生まれた企業ですが、現在はグローバル企業です。
公式資料によれば、米国のほか、ブラジル、英国、中国などにも製造拠点を展開しており、世界各地の販売網を通じて製品を供給しています。現在の公式会社情報では、世界に8つの製造拠点を持つと説明されています。
一方で、STARRETTは現在でも「Made
in USA」を重要なブランド価値の一つとして掲げています。
創業以来の米国製造の伝統を維持しながら、世界から材料・部品を調達するというグローバルな製造体制を採っています。
このあたりは、100年以上続く米国製造業企業の特徴と言えるでしょう。
9.FA・製造業でのSTARRETT
FAの視点からSTARRETTを見ると、その製品は「自動化設備そのもの」ではありません。
しかし、FA設備を成立させるための非常に重要な周辺技術を提供しています。
例えば機械加工ラインでは、
材料
→ 加工 → 寸法測定 → 判定 → 次工程
という流れがあります。
ここで測定精度が悪ければ、どれだけ高性能な工作機械を使っても正しい製品は作れません。
STARRETTのマイクロメータ、ダイヤルインジケータ、ゲージ、測定システムなどは、この「品質を保証する部分」を担当します。
また、バンドソーブレードは材料を加工工程へ投入する前の切断工程で使われます。
つまりSTARRETTは、
「材料を切る」ことと「加工されたものを正確に測る」こと
の両方に関係しているメーカーなのです。
これは製造工程全体を見ると非常に重要なポジションです。
10.2024年には非公開企業へ
STARRETTには近年、大きな変化もありました。
2024年3月、L.S.
Starrett CompanyはMiddleGround Capitalの関連会社との合併契約を発表しました。この取引により、STARRETTは株式市場に上場する公開企業から非公開企業へ移行することになりました。発表時点では、1株16.19ドルの現金による買収で、直前の株価に対して約63%のプレミアムが提示されていました。
これは、1880年創業の老舗企業が次の段階へ進むうえで大きな転換点と言えます。
非公開化後も、STARRETTは精密測定、メトロロジー、ソーブレードなどを中心とする事業を継続しています。
11.STARRETTの強み
STARRETT最大の強みは、何と言っても長年積み重ねてきた精密加工・測定技術とブランド力です。
1880年創業ですから、2026年時点で実に146年の歴史があります。
製造業では、工具の精度が製品品質に直結します。
特に測定工具は、単純に「安いから買う」という商品ではありません。
「この工具で測った数値を信用できるか」
ということが非常に重要です。
そのため、長年にわたって精密工具を作ってきたメーカーには大きな信用があります。
STARRETTが140年以上にわたって事業を続け、現在も世界市場で精密測定工具とソーブレードを展開していること自体が、ブランドの大きな資産になっています。
12.まとめ
STARRETTは1880年に米国マサチューセッツ州で創業した、世界有数の精密工具メーカーです。
創業者Laroy S. Starrettが発明したコンビネーションスクエアを出発点として、マイクロメータ、ノギス、ダイヤルインジケータ、ゲージ、精密定盤などの測定工具へ事業を拡大しました。
その後、バンドソーブレード、ハクソーブレード、ホールソーなどの切削工具にも進出し、現在ではメトロロジー装置、画像測定、レーザー測定、力・材料試験、測定データ収集システムなどまで事業領域を広げています。公式には5,000種類以上の製品を展開しています。
FA業界から見ると、STARRETTはPLCやセンサ、ロボットのような「自動化の主役」ではありません。
しかし、
「正確に加工するために測る」
「加工したものが正しいか測る」
「材料を正確に切断する」
という製造業の根幹を支えている会社です。
特に中古設備や工作機械を扱う場合、STARRETTの測定工具を目にする機会は少なくありません。古いSTARRETT製品が現在でも現場で使用されていることからも、その耐久性と信頼性の高さがうかがえます。
1880年から2026年まで146年間。
「測る」という極めて基本的な技術を中心にしながら、電子計測、データ収集、画像測定、レーザー測定へと進化してきたSTARRETTは、伝統的な機械加工技術と現代のデジタル製造をつなぐ企業と見ることができます。
FA・MROの観点からも、覚えておいて損のないメーカーです。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、STARRETT製の製品・部品は約4,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している会社・ブランドは確認できませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2026年 08月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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