AMO
AMO社――インダクティブ方式で高精度位置決めを支えるエンコーダメーカー
はじめに
FA(ファクトリーオートメーション)や工作機械の世界では、モーターを回すだけでは高精度な機械を動かすことはできない。モーターやボールねじ、リニアモーターなどが「動かす」役割を担うのに対して、その動きを正確に「測る」装置が必要になる。その重要な役割を担っているのがエンコーダである。
エンコーダは、モーターや機械軸の回転角度、移動距離、位置などを検出し、その情報をサーボアンプやCNC装置、モーションコントローラなどへフィードバックする。工作機械で工具を正確な位置へ移動させたり、ロボットの関節を狙った角度に止めたりするためには、非常に高精度な位置検出が必要となる。
この分野で特徴的な技術を持つメーカーが、オーストリアのAMO GmbHである。
AMOは「Automatisierung Messtechnik
Optik」を意味し、長さや角度を測定する測定システムを開発・製造している。1994年に設立され、インダクティブ(誘導式)のスキャニング技術を利用したエンコーダを専門的に発展させてきた。
現在のAMOは、ハイデンハイン(HEIDENHAIN)のブランド群の一つとして、高精度モーションコントロールの分野で重要な位置を占めている。ハイデンハインはAMO、ETEL、NUMERIK
JENA、RENCO、RSFなどを含むエンコーダ・モーション技術のブランド群を展開している。
AMO最大の特徴「AMOSIN®」
AMOを理解するうえで欠かせないのが、独自の**AMOSIN®**と呼ばれるインダクティブ測定方式である。
一般的な高精度エンコーダには光学式が多く使われている。光学式は非常に高い精度を実現できる一方で、光を利用して位置を検出するため、粉じん、油、切削液などの汚れが測定性能に影響する場合がある。
一方、AMOのAMOSIN®は電磁誘導を利用した測定方式であり、AMOはこの方式について、光学式に匹敵する精度と、磁気式に近い高い耐環境性を両立できることを特徴として説明している。
これは工作機械などのFA機器にとって非常に重要な特徴である。
工作機械の内部では、切削加工によって金属粉が発生する。また、切削油や冷却液が飛散することもある。さらに、機械そのものが振動することも珍しくない。
こうした環境では、単純に「最高精度」であるだけでは十分ではない。
汚れや振動が存在する環境でも、長期間にわたって正確に位置を測定できること。
これが実際の産業機械では非常に重要になる。
AMOはこの点を重視し、精度と堅牢性を両立したインダクティブ式エンコーダを製品化している。
リニアエンコーダ
AMOの代表的な製品の一つが、リニア測定エンコーダである。
リニアエンコーダは、直線方向の移動量を測定する装置だ。
例えば工作機械のX軸が100mm移動した場合、「実際に何mm動いたのか」を高精度に測定する。
ボールねじを使った機械では、モーターの回転量から機械の移動量を計算する方法もある。しかし、ボールねじにはピッチ誤差や熱膨張などによる誤差が発生する可能性がある。
そこで、機械テーブルそのものの位置を直接測定するリニアエンコーダを使用すれば、より正確な位置フィードバックが可能になる。
AMOは絶対位置型とインクリメンタル型のリニアエンコーダを用意している。
絶対位置型では、電源投入後でも現在位置を把握できるため、工作機械や自動化装置などで便利である。
AMOの絶対位置型リニアエンコーダでは、測定スケールを最大30mまで供給可能で、製品によって±20μmまたは±50μmの絶対精度が設定されている。また、エンコーダヘッドのシステム分解能は1μm、0.25μm、0.1μmという非常に細かな値に対応している。
角度エンコーダ
もう一つの重要な製品が角度エンコーダである。
角度エンコーダは、回転軸が何度回転したのかを正確に測定する。
例えば工作機械の回転テーブル、旋回軸、ダイレクトドライブモーター、ロボットの関節などでは、回転角度を正確に検出する必要がある。
AMOではインクリメンタル型と絶対位置型の角度エンコーダを展開している。
絶対角度エンコーダでは、リングスケールを内側から読み取る方式と外側から読み取る方式が用意されている。標準的なリング径は80~652mmで、さらに特殊サイズにも対応できるとしている。
対応インターフェースも幅広い。
例えば、
- EnDat
- DRIVE-CLiQ
- FANUC
- Mitsubishi
- BiSS/C
- SSI
- 1Vpp
などに対応している。
FA機器メーカーにとって、こうしたインターフェースの豊富さは重要である。エンコーダ自体が高性能でも、使用するサーボアンプやCNC装置と通信できなければシステムには組み込めないからだ。
工作機械との関係
AMO製品が特に力を発揮する分野が工作機械である。
マシニングセンタ、旋盤、研削盤、放電加工機などでは、工具やワークを正確な位置へ移動させる必要がある。
例えば、1μm単位の加工精度が要求される機械では、機械軸の位置を正確に検出できることが極めて重要になる。
さらに、5軸加工機では回転軸の精度も重要だ。
X、Y、Zの直線軸だけでなく、A、B、Cなどの回転軸を組み合わせて加工するため、回転軸の角度誤差が加工精度に直接影響する。
AMOの角度エンコーダは、こうした精密な回転位置検出に利用されている。
インクリメンタル角度エンコーダでは、工作機械、精密回転テーブル、高速トルクモーター、スピンドルなど、幅広い用途が想定されている。
ロボット分野でも重要
AMOの技術は工作機械だけに限定されない。
現在では産業用ロボットや高精度ロボットにも、高性能な角度エンコーダが必要になっている。
ロボットの関節にモーターが取り付けられている場合、モーター側の回転位置だけを測定するのではなく、負荷側の実際の関節角度を測定することで、より正確な位置制御が可能になる。
このような用途では「セカンダリエンコーダ」が重要になる。
ハイデンハインの日本向け情報でも、AMOのWMRA角度エンコーダなどを、産業用ロボットの関節に使用するセカンダリエンコーダとして紹介している。負荷がかかった状態での関節角度を直接検出し、コントローラへフィードバックすることで、ロボットの位置精度や軌跡精度の向上につなげる考え方である。
今後、ロボットがより高精度な組立や加工、検査などを行うようになるにつれて、このような高精度角度検出の重要性はさらに高まると考えられる。
「汚れに強い」というメリット
AMO製品をFAの観点から見る場合、特に注目したいのが耐環境性である。
AMOのリニアエンコーダではIP67仕様のエンコーダヘッドが用意されている。インダクティブ方式によって、汚染環境でも使用できることを大きな特徴としている。
これは「精度」と「耐久性」の両立という意味で重要である。
工場では、研究室のように完全にきれいな環境を維持することは難しい。
切削油、金属粉、粉じん、振動などが存在する環境で、エンコーダが安定して動作することが設備の信頼性につながる。
そのため、AMOの製品は「とにかく最高精度を狙う」というだけではなく、実際の生産設備で長期間使用することを意識した測定システムと考えることができる。
特殊用途への対応
AMOは標準製品だけでなく、特殊な測定課題への対応も重視している。
公式サイトでも、AMOは特殊な測定課題を解決する柔軟性と、量産機械における顧客要求への対応力を特徴として掲げている。
これはFA機器メーカーにとって大きな意味を持つ。
実際の機械では、「カタログに載っている標準品をそのまま取り付ければ終わり」というケースばかりではない。
狭いスペースに取り付けなければならない場合、大きな回転軸を測定しなければならない場合、特殊な通信インターフェースが必要な場合など、装置ごとに異なる要求が発生する。
AMOのリングスケール方式などは、こうした機械設計上の自由度を高めるための技術として利用できる。
ハイデンハインとの関係
AMOを語るうえでは、現在のHEIDENHAIN(ハイデンハイン)グループとの関係も重要である。
ハイデンハインは工作機械、エレクトロニクス、オートメーションなどの分野で、CNC制御装置やエンコーダ、モーション技術を展開している。
その中でAMOは、特にインダクティブ方式の高精度リニア・角度エンコーダという役割を担っている。
ハイデンハインは現在、AMOを含む複数のブランドを用途に応じて展開しており、ロボット、モーター、工作機械、電子・半導体製造などの分野に測定・モーション技術を提供している。
つまりAMOは、単独のエンコーダメーカーというだけではなく、ハイデンハインが持つ広範なモーションコントロール技術の中で、インダクティブ方式という特色を担当するブランドと見ることができる。
半導体・医療・印刷機械への展開
AMOの用途は工作機械だけではない。
公式情報では、医療機器、印刷機械、電子・半導体製造装置、自動車、航空宇宙産業なども用途として挙げられている。
半導体製造装置では、微細な位置決めが要求される。
医療機器でも、検査装置や画像診断装置などにおいて、高精度な位置制御が必要になる場合がある。
印刷機械では、紙や印刷ヘッドなどを正確に動かす必要があり、位置検出の精度が印刷品質に影響する。
このように、エンコーダは一見すると小さな部品だが、実際には機械全体の性能を決める重要なコンポーネントなのである。
AMO社の強み
AMOの強みをまとめると、次のようになる。
第一は、AMOSIN®というインダクティブ測定技術である。
第二は、高精度と耐環境性の両立である。
第三は、リニアエンコーダと角度エンコーダの両方を展開していることである。
第四は、EnDat、DRIVE-CLiQ、FANUC、Mitsubishi、BiSS/Cなど幅広いインターフェースに対応していることである。
そして第五は、工作機械だけでなく、ロボット、医療、印刷、半導体、自動車、航空宇宙などへ用途を広げていることである。
FA業界から見たAMO
FA業界の視点からAMOを見ると、「機械を動かすメーカー」というより、機械が正確に動いたことを確認するための目を提供するメーカーと表現できる。
サーボモーターが筋肉だとすれば、エンコーダは位置を認識する目に近い。
モーターが高速・高トルクになっても、位置を正確に把握できなければ、高精度なモーション制御はできない。
特に近年は、工作機械の高精度化、産業用ロボットの高性能化、半導体製造装置の微細化などが進んでいる。そのため、位置検出技術の重要性はますます高くなっている。
AMOはその中で、光学式とは異なるインダクティブ方式によって、**「高精度なのに、工場の厳しい環境でも使いやすい」**という方向からエンコーダ市場に存在感を示している。
まとめ
AMO GmbHは、オーストリアを拠点として高精度なリニア・角度エンコーダを開発してきたメーカーである。1994年の設立以来、インダクティブ測定技術を中心に製品を発展させ、現在ではHEIDENHAINのブランド群の一つとして位置づけられている。
最大の特徴は、独自のAMOSIN®インダクティブ測定方式だ。
光学式に匹敵する精度と、厳しい工場環境に対応できる堅牢性を両立することを目指したこの技術は、工作機械や自動化装置との相性が良い。
リニアエンコーダ、角度エンコーダ、絶対位置型、インクリメンタル型など幅広い製品を展開し、工作機械、ロボット、医療機器、印刷機械、半導体製造装置、自動車、航空宇宙など、高精度な位置決めを必要とするさまざまな産業で利用されている。
FA機器の中ではエンコーダは決して目立つ部品ではない。しかし、機械が「どこにいるのか」を正確に把握するためには欠かせない。
AMOは、インダクティブ技術を武器に、その「機械の目」を高精度かつ高信頼に実現しているメーカーと言えるだろう。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、AMO製の製品・部品は約4,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している主な会社・ブランドと種類数は以下のとおりです。
会社・ブランドは確認できませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2026年月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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