VICON

 

VICON Motion Systems Ltd(バイコン・モーション・システムズ社)は、イギリス・オックスフォードに本社を置く、モーションキャプチャ(動作解析)システムの世界的リーダー企業です。映画やゲームの映像制作、バーチャルリアリティ(VR)、ロボティクス、医療・スポーツ科学、産業機器の動作解析など、幅広い分野で「人や物体の動きを高精度に捉える技術」を提供しています。
その高精度・高信頼性の光学式モーションキャプチャシステムは、ハリウッド映画やAAAゲーム制作、さらには大学や医療研究機関にまで導入されており、動作計測の業界標準とされるほどの地位を築いています。


■ 1. 企業の概要と沿革

VICON1984年に設立され、当初から光学式動作解析システムの開発に特化してきました。創業当初の目的は、医療・リハビリテーション分野で患者の歩行分析や姿勢制御の研究を行うための精密な計測技術を提供することでした。当時、動作をリアルタイムで数値化する手段はほとんど存在せず、VICONはカメラと赤外線反射マーカーを用いた三次元位置検出技術を開発することで、世界初の商用モーションキャプチャシステムを市場に投入しました。

1990年代に入ると、映画産業やゲーム業界が3D CG技術を取り入れ始め、キャラクターアニメーションの自然な動作生成が求められるようになります。VICONはこの新たな需要をいち早く捉え、エンターテインメント向けモーションキャプチャに参入しました。
その後、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『アバター』、『スター・ウォーズ』、『マーベル』作品群など、数々の世界的映画制作でVICONの技術が採用され、名実ともにモーションキャプチャの代名詞となりました。


■ 2. 技術の中核:光学式モーションキャプチャ

VICONの技術の中心は、複数の高精度赤外線カメラによって空間内の反射マーカーの位置を三次元的に解析する光学式システムです。
具体的な構成要素は次の通りです。

  • Vero / Vantage / Viper カメラシリーズ
    解像度数百万画素クラスのセンサーを搭載し、1秒間に最大2500フレームもの高速撮影が可能。小さな反射マーカーの位置をミリ単位で特定できます。
  • マーカーおよびアクティブLEDマーカー
    反射式(パッシブ)と自発光式(アクティブ)の2種類を用意し、環境や用途に合わせて選択。人体だけでなく、ロボットや車両、工業製品の動作も追跡可能です。
  • Nexus / Shōgun / Tracker ソフトウェア
    医療研究、映画制作、工業計測などの目的に合わせて最適化された解析ソフトウェア群。これらがVICONのシステムの「頭脳」にあたります。

これらの技術により、複雑な動作をリアルタイムにキャプチャし、3D空間上で精密に再現することができます。
また、VICONのアルゴリズムは外乱光・遮蔽・反射ノイズなどに強く、他のモーションキャプチャメーカーよりも高い精度を誇ります。


■ 3. 主な事業分野

VICONの顧客層は非常に幅広く、医療・エンターテインメント・スポーツ・ロボティクス・産業分野にわたります。

(1) 医療・バイオメカニクス

創業以来の中核分野。整形外科や神経リハビリテーション、義肢設計、姿勢制御研究などに利用されます。歩行分析装置として病院や大学研究室に多数導入され、リハビリ効果の定量評価や、義足・人工関節の開発支援に活用されています。

(2) エンターテインメント(映画・ゲーム)

映画制作では、俳優にマーカーを装着して演技を撮影し、その動作データをCGキャラクターに転写します。VICONShōgunソフトウェアは、リアルタイムプレビューや骨格マッピング機能を備え、ポストプロダクションを大幅に短縮します。
ゲーム分野でも、UbisoftEASquare Enix、カプコンなど世界的スタジオが採用しています。

(3) スポーツ・動作解析

プロアスリートの動作改善やパフォーマンス分析にも活用されています。例えばサッカー選手のキックフォーム、野球投手の投球フォーム、ゴルファーのスイング解析などを3Dデータ化し、科学的なトレーニングに役立てています。
また、オリンピックやFIFA関連の研究プロジェクトにも協賛しており、VICONは「スポーツサイエンスの標準ツール」とも呼ばれます。

(4) ロボティクス・産業応用

産業ロボットや自律走行車(AGV、ドローンなど)の位置姿勢計測にも用いられます。
カメラ群で作られた「モーションキャプチャ空間」をロボットの動作領域に設定することで、GPSが届かない屋内環境でもミリメートル精度で位置を追跡可能です。近年は研究開発用の自律制御検証環境(motion lab)として、航空宇宙や自動車産業での採用も増加しています。


■ 4. 品質管理と研究開発体制

VICONは親会社である**Oxford Metrics plc(オックスフォード・メトリクス)**のグループ企業として運営されています。Oxford Metricsは科学計測およびデジタルツイン技術を手掛ける上場企業であり、VICONはその中核事業を担います。
開発はすべて英国オックスフォードの本社およびカリフォルニア州ロサンゼルスの拠点で行われ、光学・画像解析・AI分野の研究者が多数在籍しています。特にVICONの「マーカー自動識別アルゴリズム」や「深層学習による姿勢補完技術」は独自開発であり、これが精度と信頼性の高さの源泉です。

また、ISO 9001およびISO/IEC 27001(情報セキュリティ)認証を取得し、医療機関や研究機関向けのデータ信頼性を確保しています。


■ 5. 代表的な導入事例

  • 映画『アバター』シリーズ:俳優の表情と身体動作を同時にキャプチャし、CGキャラクターに反映。
  • ゲーム『アサシン クリード』、『モンスターハンター』VICONの高速度カメラで武器動作やジャンプなどの複雑なモーションを収録。
  • NASAジェット推進研究所(JPL:無重力環境シミュレーションやロボットアーム動作解析に利用。
  • 医療リハビリ施設:脳卒中後の歩行分析、義肢開発の臨床試験など。

これらの実績により、VICONは「研究機関・スタジオ・産業現場を横断するテクノロジープラットフォーム」として確固たる信頼を得ています。


■ 6. 今後の展望と理念

VICONは近年、従来のマーカー式キャプチャに加え、AIを用いたマーカーレス動作解析にも取り組んでいます。ディープラーニングによる姿勢推定アルゴリズムを開発し、カメラ映像だけで3D動作データを生成する研究を進めています。これにより、より簡易でコスト効率の高いモーション解析システムの実現を目指しています。

また、VRAR・メタバース分野では、VICONの高精度トラッキング技術がバーチャルプロダクション(仮想空間撮影)やリアルタイムアバター制御に不可欠な要素として採用されています。
同社のビジョンは「Reality Captured, Motion Understood(現実を捉え、動きを理解する)」であり、単なる計測技術ではなく、「人の動きや意図をデジタルで理解する」ことを最終目標としています。


まとめ

VICON Motion Systems Ltdは、モーションキャプチャ技術の先駆者として40年以上の歴史を持ち、医学・映像・スポーツ・ロボットなど多分野に革新をもたらしてきた企業です。その製品は、精度・安定性・信頼性の面で他社の追随を許さず、科学的実証からエンターテインメント表現まで、あらゆる「動きの記録」において欠かせない存在です。

技術の進化とともに「現実の運動データをデジタルに変換し、人間の行動や機械の制御を理解する」ことを使命とするVICONは、今後も人間とデジタルの境界を超えた新しい世界の構築に寄与していくでしょう。

 

 

 

サプライチェーン情報

 

弊社の流通中古市場調査で、VICON製の製品・部品は約35,000種類確認されています。

また互換・同等の製品・部品を供給している会社・ブランドは確認できませんでした。

 

上記のサプライチェーン情報は2025 10月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。

 

 

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