PEPPERL&FUCHS
Pepperl+Fuchs社(ペッパール・アンド・フックス社)とは
Pepperl+Fuchs社(以下、ペッパール・アンド・フックス社)は、ドイツを本拠とする世界的な産業用センサ技術・防爆機器のリーディングカンパニーです。自動化技術や工場の安全制御分野において非常に高い評価を受けており、特に近接センサ、光電センサ、RFIDシステム、防爆バリア、フィールドバス関連機器などで世界トップクラスのシェアを持っています。
本社はドイツ・マンハイム(Mannheim)にあり、世界60か国以上に拠点を展開しています。
創業の背景と歴史
ペッパール・アンド・フックス社は、1945年にドイツの戦後復興期において、Walter Pepperl(ヴァルター・ペッパール)氏とLudwig Fuchs(ルートヴィヒ・フックス)氏によって創業されました。
当初は小規模なラジオ修理工場としてスタートしましたが、両創業者は当時まだ一般的でなかった電子制御技術の可能性に早くから着目していました。
1950年代初頭、工場自動化のニーズが急速に高まる中で、同社は**世界初の誘導型近接センサ(inductive proximity sensor)**を開発します。
これは、機械的接点を持たずに金属物体を検知できる画期的な技術であり、産業界におけるオートメーション革命の大きな一歩となりました。
この発明をきっかけに、Pepperl+Fuchs社は「センサ技術の先駆者」としての地位を確立し、以後70年以上にわたって産業オートメーション分野を牽引してきました。
事業領域と製品群
ペッパール・アンド・フックス社の事業は大きく2つの部門に分かれています。
1. Factory Automation(ファクトリーオートメーション事業)
この部門では、生産ラインや物流設備における位置検知、距離測定、識別、制御に関する各種センサやシステムを提供しています。代表的な製品には以下のようなものがあります。
- 近接センサ(Inductive/Capacitive/Ultrasonic)
金属・非金属物体の非接触検出を行う。耐環境性が高く、製造・組立ラインで広く使用。 - 光電センサ(Photoelectric sensors)
反射光や透過光を利用し、対象物の有無や位置を高精度で検出。 - エンコーダ、位置検出システム
回転軸や移動物の角度・速度を検出するセンサ。 - RFIDシステム(IDent)
物流・生産ラインにおけるトレーサビリティや自動識別用途で活用。 - ビジョンセンサ、LiDAR、距離計測モジュール
ロボットやAGV(無人搬送車)向けに三次元的な空間認識を実現。
これらのセンサ群は、自動車、食品、製薬、電子機器、包装、鉄鋼、ロジスティクスなど、ほぼすべての産業分野に導入されています。
2. Process Automation(プロセスオートメーション事業)
もう一つの柱が、防爆・危険環境下での制御技術です。化学、石油・ガス、医薬、エネルギーなどのプラント分野では、安全性確保のため防爆設計が不可欠です。ペッパール・アンド・フックス社はこの分野で世界的リーダーです。
主な製品群は次のとおりです。
- アイソレーションバリア/Zenerバリア
危険区域と安全区域を電気的に分離し、爆発リスクを防止。 - 防爆端子箱・フィールドバスバリア
Ex i/Ex d/Ex eなど各種防爆規格に適合した機器を提供。 - HART通信対応機器、フィールドバスインターフェース
制御信号の安全伝送を実現。 - 遠隔I/Oシステム、信号コンディショナ
現場信号の変換・中継・監視を安全に行う。 - モバイルデバイス(防爆タブレット・スマートフォン)
危険区域での作業を可能にするi.safe MOBILEなどの協業製品。
これらの製品は、IECEx、ATEX、FM、TIISなど世界主要防爆認証を取得しており、日本市場でも多くのプラントエンジニアリング企業に採用されています。
技術開発とイノベーション
Pepperl+Fuchs社の強みは、単なるハードウェア製造企業ではなく、センサ情報を活用したデジタル化・IoT連携技術にも積極的である点です。
同社は「Sensor Intelligence(センサ・インテリジェンス)」というビジョンを掲げ、センサを単なる検出器ではなく、「データ発信デバイス」として再定義しています。
主な技術テーマ
- 産業IoT(IIoT)対応センサの開発
Ethernet/IP、PROFINET、IO-Linkなどの通信規格に対応。 - クラウド連携・データ解析基盤(SENSORIK4.0®)
センサデータをクラウドで収集・分析し、予知保全や最適制御に活用。 - スマート工場化への貢献
デジタルツイン、エッジコンピューティング、AI分析などと連携可能なモジュールを展開。 - グリーンエネルギー・サステナビリティ分野
再生可能エネルギー施設や水素プラントへのセンサソリューション提供。
組織体制とグローバル展開
ペッパール・アンド・フックス社は、世界に約6,000人以上の従業員を擁し、欧州、アジア、北米、南米に生産・開発拠点を持ちます。主要な生産拠点はドイツ、シンガポール、インド、インドネシア、中国などにあります。
日本法人「ペッパール・アンド・フックス株式会社」は東京都港区に拠点を置き、日本市場向けの販売・技術サポートを担当しています。
また、グローバルでは代理店・パートナー網が整備されており、日本国内でもIDEC、横河電機、日立、オムロンなどの企業と協業実績を持ちます。
企業理念と経営姿勢
ペッパール・アンド・フックス社の理念は、「Driving Innovation –
Empowering the Future(革新を推進し、未来を力づける)」に集約されます。
同社は創業以来、イノベーションと安全性を両立させる製品づくりを使命としており、社員教育にも「技術者精神」と「誠実な品質文化」を重んじています。
創業者一族の経営哲学が現在も息づいており、家族経営的な企業文化を保ちながらも、グローバル水準の開発力を維持していることが特徴です。
近年の動向
- デジタルツイン対応センサ群の拡充
製造現場のリアルデータを3Dモデルで再現し、工程最適化を実現。 - 防爆スマートデバイス市場への進出強化
現場作業者のモバイル化を推進し、安全性と効率を両立。 - サステナブル経営の推進
エネルギー効率向上、リサイクル部材採用、環境負荷低減への取組みを継続。 - 自動倉庫・物流分野の拡大
LiDAR・距離センサを用いたAGV、ピッキング支援システムの需要が拡大中。
評価と信頼性
ペッパール・アンド・フックス社は、その技術信頼性と安全性で多くの産業界から高い評価を得ています。
特に「過酷環境でも安定動作する堅牢設計」「認証取得の多さ」「グローバルで一貫した品質管理体制」などは同社の代名詞です。
欧州の高い安全基準を満たしながら、各国の産業規格に柔軟に対応できる点も強みです。
まとめ
ペッパール・アンド・フックス社は、産業オートメーションと防爆技術の両分野で世界的に信頼されるドイツ企業です。
その長い歴史の中で、近接センサという基礎技術を発明した先駆者でありながら、現在ではIIoT、スマートファクトリー、防爆モバイル機器といった次世代領域にも積極的に進出しています。
安全性・信頼性・技術革新を重視する姿勢は、創業以来変わらず、世界中の製造業・プロセス産業の発展を支え続けています。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、PEPPERL&FUCHS製の製品・部品は約38,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している会社・ブランドは確認できませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2025年 10月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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