ONSEMI
■概要
ON Semiconductor(オンセミコンダクター) は、米国アリゾナ州フェニックスに本社を置く、世界有数の半導体メーカーである。
社名は2021年に小文字表記の 「onsemi」 に刷新され、「エネルギー効率とインテリジェンスの融合」を掲げる新ブランドとして再スタートを切った。
同社は特に自動車、産業機器、電力変換、イメージセンサー、センシングICなどの分野で高いシェアを持ち、“Smart Power + Smart Sensing” をコア戦略として展開している。
■設立の経緯と歴史的背景
●モトローラからのスピンオフ(創業)
onsemiのルーツは、Motorola(モトローラ)社の半導体部門にある。
1999年、モトローラが半導体事業を分社化し、新会社「ON Semiconductor」として独立させたのが始まりである。
当初はモトローラ時代からの**ディスクリートデバイス(トランジスタ、ダイオード、電源IC)**が中心であり、「堅牢で信頼性の高い半導体メーカー」として世界中の産業・自動車メーカーに採用された。
●買収による成長期(2000〜2010年代)
2000年代以降、onsemiは積極的なM&Aを通じて事業領域を拡大していった。
- 2000年:Cherry Semiconductor(パワーマネジメントIC)を買収
- 2008年:AMI Semiconductor(車載マイクロコントローラ、ミックスドシグナル)を買収
- **2011年:SANYO Semiconductor(日本)**を買収し、日本国内の生産・開発基盤を強化
- 2014年:Aptina Imaging を買収し、車載および産業用イメージセンサー市場に参入
- 2016年:Fairchild Semiconductor を買収し、パワー半導体分野で大手の地位を確立
これにより、ON Semiconductorは単なるディスクリートメーカーから、パワー・アナログ・センシングを統合する総合半導体企業へと進化した。
■事業構成と主要市場
onsemiの事業は大きく3分野に分かれる。
① Power Solutions Group(パワーソリューション部門)
この部門は同社の中核であり、電源変換・モータ制御・バッテリマネジメント・電動化システムに関わる製品群を提供している。
代表的な製品には以下がある:
- MOSFET、IGBT、SiCパワートランジスタ
- AC/DC・DC/DCコンバータ
- バッテリ保護IC、電流センサー、モータドライバ
- 車載充電器用電力制御IC
これらはEV(電気自動車)・再生可能エネルギー・産業オートメーション分野で採用が進んでいる。特にSiC(シリコンカーバイド)ベースのパワー半導体は、電力損失を低減し、EVの航続距離延長やエネルギー効率改善に直結する重要技術として注目されている。
② Intelligent Sensing Group(スマートセンシング部門)
Aptina買収で得たイメージング技術を核に、車載カメラ、ADAS(先進運転支援)、産業用ビジョン、セキュリティ監視、医療機器など向けの高性能センサーを供給している。
onsemiのイメージセンサーは、HDR(ハイダイナミックレンジ)性能と低ノイズ特性に優れており、自動車メーカー各社のADASカメラシステムに採用されている。
また、ToF(Time-of-Flight)センサーやGlobal
Shutter方式の高速撮像技術も強みであり、産業ロボットやマシンビジョン用途にも展開されている。
③ Advanced Solutions Group(アナログ・ミックスドシグナル)
この部門では、信号処理、通信インターフェース、電源制御ICなどを提供。
特に車載・産業用途のアナログICは高い信頼性(AEC-Q100準拠)を持ち、温度耐性やノイズ耐性に優れている。
この部門は他の二部門を支える基盤的役割を担い、onsemiの「高信頼性半導体ブランド」としての地位を確立している。
■主要技術と競争優位性
●1. パワーエレクトロニクス(SiC・GaN技術)
onsemiは、シリコンカーバイド(SiC)パワー半導体の量産メーカーとして世界でも上位に位置している。
2021年にGT Advanced Technologiesを買収し、SiCウェハの内製化に成功。これにより、材料からデバイス、モジュールまでの垂直統合型サプライチェーンを確立した。
この体制は、EVインバータや急速充電器などの分野で競合他社(STMicroelectronics、Infineon、Wolfspeedなど)に対抗する大きな強みとなっている。
●2. 高信頼センシング(車載カメラ・産業ビジョン)
onsemiのイメージセンサーは、温度変化や振動など過酷な条件下でも安定して性能を発揮する。
特に自動車の周辺監視カメラ(Surround View)やドライバーモニタリング向けでは、高い市場シェアを持つ。
また、製造ラインのAI画像認識システムやスマートシティ監視など、センシング+AI処理の融合分野にも積極的に進出している。
●3. 低消費電力設計技術
モトローラ時代からの伝統として、電力効率の高いデバイス設計に強みを持つ。
onsemiの「EcoSpin」「EcoSiC」シリーズは、低損失・高効率を追求した設計思想を象徴している。
この「サステナブル・パワー」という企業理念は、同社のブランディング戦略の中核でもある。
■近年の経営戦略と事業再編(2020年代)
onsemiは2021年以降、CEOの Hassane El-Khoury の下で経営構造を抜本的に改革している。
「収益性重視」「高付加価値集中」の方針を掲げ、汎用ロジックや低利益製品を縮小し、EV・再エネ・産業自動化・センシングの4大成長分野に経営資源を集中している。
主な施策:
- グローバル生産拠点の再編(低利益工場を閉鎖、SiC生産能力を3倍に拡大)
- 旧世代ディスクリート製品の整理
- ブランドを「onsemi」に刷新(2021年)
- ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の強化
この結果、onsemiは従来の「汎用半導体メーカー」から脱却し、電動化社会を支える戦略的デバイス企業へと転換を遂げている。
■主要顧客・採用分野
onsemiの製品は、世界の主要メーカーで幅広く採用されている。
- 自動車:テスラ、トヨタ、日産、フォルクスワーゲンなど
- 産業機器:ABB、三菱電機、ロックウェルオートメーション
- エネルギー:太陽光インバータ、蓄電システム、EV充電設備
- コンシューマ:スマートカメラ、医療機器、ドローンなど
特にEV化の加速により、onsemiのSiCデバイスと車載カメラは今後の主力成長領域となっている。
■日本との関わり
onsemiは日本市場にも深く関わっており、旧三洋半導体を取り込んだことで、群馬県高崎市や岡山県などに生産・設計拠点を持つ。
また、自動車部品メーカー(デンソー、アイシン、日立Astemoなど)と技術連携を進め、車載電動化向け半導体の共同開発も行っている。
日本法人「オン・セミコンダクター・ジャパン」は東京・品川に本社を置き、アジア市場の中核拠点として機能している。
■まとめ ― onsemiの位置づけと将来展望
onsemiは現在、**「パワー半導体+センシング技術の二本柱」**で次世代産業を支える戦略企業として世界的に注目されている。
単なるデバイス供給を超え、エネルギー効率・安全性・知能化という3つの社会課題に直接貢献する技術を提供している点が特徴である。
未来に向けて同社は、
- EVと再生可能エネルギーの統合制御
- AIとセンシングの融合(Smart Edge)
- サプライチェーンのグリーン化
を柱とし、環境負荷を抑えた「クリーンテクノロジー企業」としての進化を続けている。
■結語
1999年にモトローラから独立したON Semiconductorは、
「高効率で賢い世界(Efficient and Intelligent World)」を創る企業
として25年にわたり成長してきた。
その製品は、見えないところで車を走らせ、工場を制御し、エネルギーを最適化している。
そして今日、onsemiは“Powering the future”という理念のもと、脱炭素社会・自動化社会の要となる半導体企業として、世界産業の基盤を支え続けている。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、ONSEMI製の製品・部品は約20,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している会社・ブランドは確認できませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2025年 10月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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