ASHCROFT
ASHCROFT社
― 圧力と温度計測のパイオニア
Ashcroft Inc.(アシュクロフト社) は、米国コネチカット州ストラトフォード(Stratford, Connecticut)に本社を置く、圧力および温度計測機器の世界的リーディングカンパニーです。設立は1852年と非常に古く、産業用計測の歴史とともに歩んできた老舗企業のひとつです。現在では、アナログからデジタルに至る幅広い計測ソリューションを提供しており、その信頼性・精度・耐久性の高さで世界中のエンジニアから高い評価を得ています。
創業と歴史
Ashcroft社の起源は、創業者である**Edward Ashcroft(エドワード・アシュクロフト)**による革新的な圧力計の開発にさかのぼります。19世紀半ば、産業革命が進行するアメリカでは、蒸気機関の爆発事故が多発していました。当時の圧力計は精度も耐久性も不十分で、安全管理の信頼を置けるものではなかったのです。
そこでエドワード・アシュクロフトは、蒸気機関の安全性向上を目的として高精度な**ブルドン管式圧力計(Bourdon
Tube Gauge)**の改良に取り組み、1852年にAshcroft
Manufacturing Companyを設立しました。彼の製品は従来品に比べて極めて高い信頼性を誇り、急速に普及。やがて「安全な圧力監視装置」として、鉄道・造船・発電所・化学プラントなどに広く採用されるようになりました。これが、今日のAshcroftブランドの礎となりました。
製品ラインアップ
Ashcroft社は現在、圧力・温度の計測と制御を中心に、以下のような豊富な製品群を展開しています。
1. 圧力計(Pressure Gauges)
最も代表的な製品群です。産業用・医療用・食品設備・石油化学プラントなど、あらゆる現場で利用されています。ブルドン管式、ダイアフラム式、カプセル式など、用途に応じた多様な構造を採用しており、機械式だけでなくデジタル表示型もラインアップされています。
特に「Ashcroft 1009シリーズ」や「1279シリーズ」などは、堅牢で高精度なモデルとして世界中でロングセラーとなっています。
2. 差圧計(Differential Pressure Gauges)
流体の圧力差を測定するための計器で、フィルター監視、ポンプ性能管理、空調システムのバランス調整などに使用されます。Ashcroftの差圧計は、圧力範囲が広く、過負荷保護機能を備えた設計が特徴です。
3. 圧力トランスデューサ/トランスミッタ(Transducers & Transmitters)
アナログ信号やデジタル信号を出力する電子式センサで、プロセス制御システムやデータロギングに使用されます。
高温・高圧・腐食性環境にも対応するステンレス製ハウジングを採用し、ISO 9001認証に基づいた品質管理体制のもとで製造されています。
4. 温度計(Temperature Gauges)
バイメタル式やガス膨張式などの機械式温度計のほか、電子式センサも提供。食品・医薬・エネルギー・HVAC分野など、衛生基準や高信頼性が求められる現場で広く使用されています。
5. スイッチ類(Pressure & Temperature Switches)
設定圧力や温度に達した際に電気信号を出す制御装置で、ポンプ保護や安全遮断などのプロセス制御に不可欠です。機械式・電子式の両方が揃っており、防爆仕様のモデルもラインアップされています。
技術と品質へのこだわり
Ashcroft社の最大の特徴は、信頼性の極致を追求する品質哲学にあります。各製品はISO 9001やATEX、CE、ULなどの国際規格を満たし、厳格な校正・試験を経て出荷されます。また、医薬・食品・半導体分野向けには**衛生設計(Hygienic
Design)**に基づいたモデルを開発し、CIP(定置洗浄)やSIP(蒸気洗浄)にも対応しています。
さらに、同社は圧力センサのトレーサビリティにも力を入れており、校正証明書付きの出荷体制を整備。特に原子力発電や航空宇宙など、わずかな誤差も許されない分野では、Ashcroft製品の信頼性が絶対的な価値として評価されています。
産業分野への応用
Ashcroftの計測機器は、以下のような多様な分野で使われています:
- エネルギー・発電所:ボイラー圧力や蒸気温度の監視
- 化学・石油化学プラント:腐食性ガスや液体の圧力制御
- 製薬・食品産業:衛生規格対応モデルによる製造ライン管理
- 建築・空調設備(HVAC):空調ダクト内差圧のモニタリング
- 水処理・環境設備:ポンプ圧力・流体圧力の自動監視
- 輸送・鉄道・航空:安全圧力制御および試験装置への組込み
こうした多用途展開は、「測る」「守る」「制御する」というシンプルながら本質的なテーマのもとに統一されており、Ashcroft製品は安全運転・省エネルギー・安定稼働の基盤を支えています。
グローバルネットワークと日本での展開
現在、Ashcroft社は北米・欧州・アジアに製造および販売拠点を持ち、世界100カ国以上に代理店ネットワークを展開しています。日本国内ではアシュクロフト・ジャパン株式会社が正式代理店として活動しており、産業機器メーカーやプラント設計企業、大学・研究機関などに向けて製品供給・技術サポートを行っています。
最新動向とサステナビリティ
近年のAshcroft社は、デジタル化と環境配慮の両立を目指しています。
IoT技術を活用したワイヤレス圧力モニタリングシステムや、クラウド対応のデータロガーなど、新世代のスマート計測ソリューションを開発中です。また、RoHSやREACHなどの環境規制にも完全対応し、持続可能な製造プロセスを推進しています。
まとめ
Ashcroft社は、170年以上にわたり「安全と信頼を測る」ことを使命としてきた企業です。その製品は単なる計器ではなく、産業インフラの安全を守る生命線といっても過言ではありません。
創業者エドワード・アシュクロフトが掲げた理念――「人々の命を守るために、正確な圧力を測る」――は、デジタル化が進む現代においても変わることなく息づいています。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、
ASHCROFT製の製品・部品は約52,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している主な会社・ブランドと種類数は以下のとおりです。
WEKSLER INSTRUMENTS 206
上記のサプライチェーン情報は2025年 10月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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