東洋電機製造:TOYO DENKI
1.会社の概要
東洋電機製造株式会社(TOYO DENKI SEIZO K.K.)は、東京都中央区に本社を置く重電メーカーであり、主に 鉄道用電気機器、産業用電動機・制御装置、電力変換装置 を中心に事業を展開している。1918年に創業され、100年以上の歴史を持つ老舗企業である。
社名の通り「電機製造」を本業とし、日本の鉄道インフラや産業設備の発展と密接に関わってきた。現在も東証スタンダード市場に上場しており、鉄道・産業分野における電気機器メーカーとして独自の地位を確立している。
2.創業の経緯と歴史
(1) 創業期(1918年~1930年代)
東洋電機製造は1918年に東京で創業。大正時代は電化の波が押し寄せ、日本国内で鉄道の電化が進展していた。創業当初から鉄道向けのモーターや制御装置の開発に携わり、国産電車の電装化を支えた。
(2) 戦前・戦後の成長期
1930年代から40年代にかけては、国内の鉄道車両製造会社(日本車輌製造、近畿車輛など)と連携し、主電動機や制御装置の供給を拡大。戦後は復興需要に支えられ、東洋電機製造は鉄道インフラの再建に大きな役割を果たした。
(3) 高度成長期(1950~70年代)
新幹線や都市鉄道の拡大に伴い、同社の電動機・制御機器の需要は急増。特に都市圏の私鉄や地下鉄向けに多数の納入実績を持つ。さらに、産業機械や一般向け電動機にも事業領域を拡大した。
(4) 近年(1980年代~現在)
1980年代以降はインバータ制御やVVVF(可変電圧可変周波数)技術の開発に注力。直流モーターから交流誘導モーターへの転換を国内鉄道に広める一翼を担った。現在では、国内のみならずアジア諸国や北米市場にも進出しており、国際展開も進んでいる。
3.主要な事業分野
東洋電機製造の事業は大きく3分野に分かれる。
(1) 鉄道車両用機器
- 主電動機(トラクションモーター):鉄道車両の走行を担う心臓部であり、直流モーターから交流誘導モーターまで幅広く提供。
- 制御装置:電車の加速・減速を制御する装置。VVVFインバータ制御装置を国内で早期に開発・導入。
- 補助電源装置:車内照明や空調などに電力を供給。
- 集電装置・パンタグラフ関連:架線から電力を安定的に供給するための技術を開発。
→東洋電機は特に 私鉄・地下鉄・新幹線向け に強みを持ち、国内鉄道事業者との関係が深い。
(2) 産業用電気機器
- 大型電動機・発電機:工場設備やプラントに供給。
- 産業用制御装置:ポンプ、送風機、圧縮機などの制御に使用。
- 電力変換装置:インバータやコンバータ技術を応用し、産業機械の効率化に寄与。
(3) 新エネルギー・その他
- 風力発電関連機器:発電制御システムの提供。
- 電力貯蔵・電動モビリティ関連:バッテリー制御や小型EV向けシステムなど、新領域に取り組んでいる。
4.技術的特徴と強み
- VVVFインバータ制御の先駆者
東洋電機は国内でいち早くVVVFインバータを鉄道に導入し、省エネルギー化や低騒音化を実現した。 - 鉄道用モーターの高信頼性
長寿命・高耐久を誇り、国内外で多数の車両に採用。特に東京メトロ、東急電鉄、JR各社などで利用実績が多い。 - 産業分野への応用力
鉄道向けに培ったモーターや制御技術を産業機械や新エネルギー分野に展開。これにより鉄道依存を軽減し、事業安定化を図っている。 - カスタム対応力
顧客の車両仕様や産業設備に合わせたオーダーメイド設計が可能で、国内外ユーザーから信頼を集めている。
5.主要納入実績
- 国内:JR東日本・JR東海・JR西日本、東京メトロ、東急、小田急、阪急電鉄、近畿日本鉄道など
- 海外:台湾高速鉄道、香港MTR、米国各都市の都市鉄道、アジア諸国の新興鉄道事業者
東洋電機は「表舞台には出にくいが、車両の心臓部を担う存在」として、国内外で重要な役割を果たしている。
6.業界における位置づけと競合
鉄道車両用電機機器の分野では、以下の企業が主要競合である。
- 日立製作所(鉄道システム大手、海外展開力が強い)
- 東芝インフラシステムズ(鉄道用電機機器全般に強み)
- 三菱電機(新幹線向けに多数納入)
- 川崎重工業(電動機分野)
この中で東洋電機は、規模は比較的小さいが 鉄道分野に特化した専門メーカー として位置づけられる。特に私鉄や地下鉄など中規模案件で強い存在感を示す。
7.経営戦略と今後の展望
- 海外展開の強化:人口増加と都市化が進むアジア諸国の都市鉄道向けに積極的に進出。
- 省エネルギー技術の深化:鉄道・産業機器のエネルギー効率をさらに高め、CO₂削減に貢献。
- 新エネルギー分野への挑戦:再生可能エネルギーや電動モビリティ向け製品を開発し、次世代の成長分野を狙う。
- 鉄道×IoT:鉄道車両の状態監視や予知保全を可能にするIoTソリューションに取り組み、鉄道事業者の運用効率化を支援している。
まとめ
東洋電機製造株式会社(TOYO DENKI)は、1918年の創業以来、日本の鉄道電化を支えてきた専門メーカーであり、主電動機や制御装置などの電気機器を通じて鉄道インフラの発展に大きく貢献してきた。
鉄道用機器に強みを持ちつつ、産業用電機や新エネルギー分野にも事業を広げ、長期的な安定と成長を目指している。規模としては日立や三菱電機と比べれば中堅だが、「鉄道電機の専門家」として国内外の顧客から高い信頼を得ている。
その存在は、普段利用する鉄道車両の裏側で確実に息づいており、社会インフラの安全・快適・省エネを支える縁の下の力持ちといえるだろう。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、東洋電機製造:TOYO DENKI製の製品・部品は約60種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している会社・ブランドは確認できませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2025年 07月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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