MOLEX
MOLEX社の概要
MOLEX(モレックス)は、アメリカ合衆国イリノイ州に本社を置く、世界的な電子部品メーカーです。特に コネクタ、端子、ケーブルアセンブリ の分野で知られており、PCやスマートフォン、自動車、産業機械、医療機器、通信インフラなどあらゆる分野で利用されています。1938年に設立され、現在は電子接続技術におけるグローバルリーダーとして、100カ国以上に拠点を展開する巨大企業です。
MOLEX社の使命は「人・機械・データをつなぐ」ことにあります。単なるコネクタ部品の提供にとどまらず、通信インフラの進化、自動車の電動化・自動運転化、産業オートメーション、5Gネットワーク、医療分野のデジタル化など、社会全体の進歩に不可欠な「接続の技術」を支えている企業です。
歴史と発展
MOLEXの歴史は1938年、アメリカ・イリノイ州ブルックフィールドで始まりました。創業者は Frederick Krehbiel 氏で、当初はプラスチックの射出成形加工を行う小さな会社でした。「Molex」という社名は、同社が初めて製造したモールド素材(Molded thermoplastic resin
"Molex")に由来します。
1950年代、MOLEXは電子コネクタの製造に参入し、これが転機となりました。当時の電子産業は急成長しており、信頼性が高く量産可能なコネクタ需要が爆発的に拡大していました。MOLEXはプラスチック成形技術を活かし、軽量かつ高性能なコネクタを開発。これが家電や自動車産業に広く採用され、事業を拡大していきました。
その後、コンピュータの普及とともにMOLEXの名は一躍有名になります。特に1980年代から2000年代初頭にかけて、PC内部で使われた「4ピン電源コネクタ(Molexコネクタ)」は世界中のエンジニアに馴染み深い存在となりました。HDDや光学ドライブに電力を供給するためのこのコネクタは、事実上の業界標準として長く使われました。
2013年には世界的な電子部品メーカー Koch Industries(コーク・インダストリーズ)の傘下に入り、さらなる成長基盤を獲得しました。現在も独自ブランドを維持しつつ、グループの資金力を背景に事業拡大を続けています。
製品ラインナップ
MOLEX社は膨大な製品群を持っていますが、大きく分けると以下のように整理できます。
1. コネクタ(Connectors)
- ワイヤ・トゥ・ボード(WTB):基板とケーブルを接続する標準コネクタ
- ボード・トゥ・ボード(BTB):基板間の接続に利用
- FFC/FPCコネクタ:フレキシブル基板用の超小型コネクタ
- 丸形コネクタ、同軸コネクタ:耐環境性や高速通信に対応
2. ケーブルアセンブリ
- カスタムハーネス:自動車や産業機器向け
- USB、HDMI、DisplayPortケーブル:民生機器や通信分野に利用
- 光ファイバーケーブル:データセンターや通信インフラ向け
3. 電源コネクタ
- Molex 4ピン電源コネクタ(PCで有名)
- Micro-Fit、Mini-Fitシリーズ:小型化・大電流対応の電源コネクタ
- 高電圧/高電流対応製品:EV、HV、産業ロボット用
4. 通信・高周波ソリューション
- RFコネクタ:5G通信、アンテナ、無線機器向け
- 光通信コネクタ:データセンター、クラウドサーバー用
5. センサー・スイッチ
- 温度、圧力、ポジション検出用センサー
- 小型スイッチや安全関連デバイス
6. カスタムソリューション
- 顧客の仕様に合わせた専用コネクタやケーブルアセンブリの設計・製造
主な市場分野
MOLEXの製品は、ほぼすべての電子機器産業で利用されています。
- 自動車産業
EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)、ADAS(先進運転支援システム)、自動運転技術で必須の高電流・高速通信コネクタを提供。 - 通信インフラ・データセンター
5G、クラウドコンピューティング、光通信に欠かせない高速・大容量コネクタやケーブルを供給。 - 産業オートメーション
工場自動化、ロボット、制御盤用の堅牢コネクタを提供。 - 医療機器
携帯型診断機器や病院の高度システムに使われる小型・高信頼コネクタ。 - コンシューマエレクトロニクス
スマホ、ノートPC、テレビ、ゲーム機などで使用。 - 航空宇宙・防衛
過酷環境対応の高信頼性コネクタを供給。
技術的特徴と強み
- 多様な製品群
数十万種類以上の標準製品を持ち、ほぼあらゆる用途に対応できる。 - 高信頼性
航空宇宙や自動車向けにも採用される耐久性を持ち、長期稼働が可能。 - 高速・高周波対応
5Gやデータセンター向けに最大25Gbps以上の通信を可能にするコネクタを開発。 - 大電流対応
EVや産業用ロボット向けに、大電流(数百アンペア級)を安全に扱える製品を持つ。 - グローバルサポート
世界中に拠点を持ち、現地での技術支援や製造に対応。
競合との比較
コネクタ業界はグローバル競争が激しく、TE Connectivity、Amphenol、JAE(日本航空電子)、Hirose、JST、日本モレックス(Molex
Japan)などが主要プレイヤーです。
- TE Connectivity:世界最大級のコネクタメーカー。自動車や通信で強み。
- Amphenol:軍事・航空分野に強い。
- MOLEX:標準製品の豊富さとカスタム対応力が特徴。
MOLEXは「幅広い市場に対応できる総合力」と「顧客の要望に応える柔軟性」で存在感を発揮しています。
まとめ
MOLEX社は、1938年の創業以来、80年以上にわたり「接続技術」の分野をリードしてきました。特にPCの電源コネクタで世界的に有名になりましたが、現在では自動車、通信インフラ、産業機械、医療機器など多岐にわたる分野で不可欠な電子部品メーカーへと発展しています。
同社の強みは、膨大な製品ラインアップ、高信頼性、最新技術対応、カスタムソリューション力 にあります。社会のデジタル化・電動化が進むほど、MOLEXの役割はさらに大きくなっていくでしょう。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、MOLEX製の製品・部品は約60,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している主な会社・ブランドと種類数は以下のとおりです。
WOODHEAD 7983
FCT ELECTRONICS 68
GW CONNECT 4
AERO-MOTIVE 3
上記のサプライチェーン情報は2025年月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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