POMONA ELECTRONICS
POMONA ELECTRONICS(ポモナ・エレクトロニクス)は、電子計測・試験用アクセサリーの世界では非常に有名なメーカーであり、特に「測定器と測定対象を確実につなぐ」ための製品群で知られている。オシロスコープ、デジタルマルチメータ(DMM)、RF測定器、各種試験装置などを扱う現場では、一度はPOMONA製品を見たことがある技術者も多い。創業以来、単なるケーブルメーカーではなく、「高信頼なインターフェースを提供する専門企業」として発展してきた会社である。
POMONA ELECTRONICSは1951年にアメリカ・カリフォルニア州ポモナで創業された。元々は真空管テレビ時代のサービス用途向けに、測定ケーブルやアダプタを製造していた会社である。創業者はJoseph J. MusarraとCarl
W. Musarra兄弟で、小さな工場からスタートしたと言われている。テレビ修理技術者向けに「測定を安全かつ素早く行えるアクセサリー」を供給したことが、同社の原点だった。
1950〜60年代は電子機器の急速な普及期であり、測定器市場も拡大していた。当時の電子計測では、「測定器本体」よりもむしろ「どう接続するか」が大きな問題だった。たとえば、
- 狭い基板にどうやってプローブを当てるか
- 高周波信号をどう劣化なく接続するか
- 高電圧を安全に測定するにはどうするか
- 現場で誤接触を防ぐにはどうするか
といった課題が大量に存在した。
POMONAはここに特化した。
つまり、テスターやオシロそのものを作るのではなく、「計測器と現場を結ぶ最後の接点」を専門にしたのである。この戦略が非常に成功した。現在でも、測定アクセサリー分野では世界トップクラスの知名度を持つ。
同社の代表的製品としては、
- テストリード
- バナナプラグ
- BNCケーブル
- RFアダプタ
- ICテストクリップ
- グラバークリップ
- オシロスコープ用プローブアクセサリ
- 同軸変換アダプタ
- パッチコード
- 高電圧測定アクセサリ
などがある。
特に有名なのは「バナナプラグ系アクセサリー」である。
電子回路を触る人なら、赤黒の4mmバナナプラグを一度は見たことがあると思う。POMONAはこの分野で非常に多くの標準的製品を提供してきた。測定器メーカーや研究機関で「とりあえずPOMONAなら安心」という扱いを受けることも多い。品質面の信頼が極めて高いからである。
POMONA製品の特徴は、「派手ではないが異常に堅実」であることだ。
例えば安価なテストリードでは、
- 被覆が硬化する
- 断線しやすい
- 接触抵抗が増える
- シールド性能が悪い
- ノイズを拾う
- 高電圧安全規格が弱い
といった問題が起きやすい。
しかしPOMONAは、測定現場の信頼性を最優先している。そのため価格は安物より高いが、長期間安定して使える。特に研究開発、航空宇宙、防衛、医療機器、通信インフラなど、測定ミスが重大問題になる分野で評価が高い。
また、POMONAはRF(高周波)関連アクセサリにも強い。
BNC、TNC、N型、SMAなどの同軸コネクタ変換やケーブルアセンブリは、測定精度に大きく影響する。特にGHz帯になると、コネクタ品質が悪いだけで波形が崩れたり、反射が増えたりする。POMONAはこの分野で長年のノウハウを蓄積しており、計測器メーカーからも高く評価されている。
同社の製品が評価される理由のひとつは、「現場理解」が非常に深い点にある。
例えば、
- 狭い場所でつかみやすいクリップ形状
- 誤接触を防ぐ絶縁構造
- 色分けによる視認性
- 曲げに強いケーブル
- 高耐久ストレインリリーフ
- IEC安全規格対応
など、実際に測定する技術者の使い勝手が細かく考えられている。
これは単にCAD上で設計しただけでは出てこない。長年サービスマンやエンジニアと付き合ってきた会社特有の「現場臭さ」がある。
また、POMONAは「変換アダプタの異常な豊富さ」でも有名だ。
電子測定では、
- BNC⇔バナナ
- SMA⇔BNC
- ミニグラバー⇔バナナ
- ICクリップ⇔テストリード
など、ありとあらゆる変換が必要になる。
POMONAのカタログを見ると、「こんな変換あるのか…」というレベルで大量のアダプタが並んでいる。研究所や修理現場で「特殊変換が必要になった時、POMONAを探す」という文化があるくらいだ。
1990年代後半には、世界的計測器メーカーであるFluke
Corporation の傘下に入った。これによってFlukeの測定器群との親和性がさらに強化された。現在ではFlukeグループの一員として、計測アクセサリ部門を支える重要ブランドになっている。
面白いのは、POMONAは「主役ではないが現場では絶対必要」という存在であることだ。
例えばオシロスコープ本体はTektronixやKeysightが注目される。しかし実際の測定では、
- ケーブル品質
- 接触信頼性
- プローブ構造
- アダプタ精度
が測定結果を左右する。
つまり、POMONAは“縁の下の力持ち”なのである。
特に修理・保守・開発現場では、
「測定器は高級なのに、リード線が粗悪」
だと全体の品質が崩壊する。そこを支えるのがPOMONAだ。
現在では世界中の電子部品商社、計測器ディストリビュータ、研究機関で広く扱われている。日本でもRS、Mouser、DigiKeyなどを通じて入手可能で、電子計測に関わる技術者には非常に馴染み深いブランドである。
電子計測業界には、「測定器メーカー」は多数ある。しかし「測定アクセサリー専門」でここまでブランド力を持つ企業は意外と少ない。その意味でPOMONA ELECTRONICSは、電子計測インフラを支える名脇役企業と言えるだろう。
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サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、POMONA
ELECTRONICS製の製品・部品は約4,000種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している会社・ブランドは確認できませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2026年 05月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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